【書評】羽田圭介Phantom年収250万の行きつく先とは

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羽田圭介のPhantomを途中まで読んでいます。今回の記事では羽田圭介の小説Phantomについてネタバレなしで書評を書いてみました。お時間あればお目通しください。

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羽田圭介作品は、はじめて読む作品となりました。

芥川賞受賞作「スクラップ・アンド・ビルド」は有名ではあるのものメディアで表現される羽田圭介という小説家はテレビの文化人枠の域を超えずに「このコメントをする人間が芥川賞を受賞したのか」という吹けば風に流されるようなとげの刺さり方で次のニュースが始まれば関心はすぐに風見鶏の頭の後ろへ誘われるそんな存在でした。

Phantomを読む動機としても新刊が出たのが2021/7/14なので、綿矢りさにハマって2000~2010年代の文庫本ばかり読んでいたから、最近の本で話題のものはないかと探していたら、偶然見かけたからです。羽田圭介さんも話題の作家としてYoutubeやテレビなどメディアで見かけていたから一冊読んでみようかと手に取ったのが始まりです。

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羽田圭介Phantomは若年貧困層の救いの渇望を書いている

 主人公の華美は近年注目が高まっている投資にて資産形成をしながら生活をする様の詳細が羅列されるように描かれています。

友人から結婚式二次会の招待状をみ見て華美はお金の計算を思考します。

友人の結婚式二次会の会費が「7000円」会場までのJR線と東京メトロを乗り継いで往復する交通費が「2460円」三次会にも出席することになった場合の費用を「3000円」と仮定して合計「12,460円」

12,460円の出費と友人の結婚式二次会を比べて、行くべきか行かざるべきか悩みます。

この12,460円を友人のために使えない人間の思考こそが日本の貧困の個人の意識であり、国の意識として表面化しているのが少子化といえるでしょう。

すなわち、この小説は日本の貧困層で住んでいる比較的若い人間のお金への考えを具体化して言語化した小説であることが分かります。

2025 年2月12日、日本証券業協会の報告書によれば、2024年から始まった新NISAの年収分布は、「年収300万円未満」の者の割合が39.7%と最も高く、「300万円~500万円未満」の者の割合が27.7%と続くとデータが発表されている通り、低年収の投資に資本を掛けられない人ほど生存本能が生まれて自分で危機を脱しようという動きは2024年新NISAという新しい制度からみられます。華美も御多分に漏れず投資をして資産形成をしようという防衛本能が投資への行動として現れたのだろうと推察できます。

 また、主人公である華美の思考は止まりません。

結婚式二次会から三次会までの金額「12,460円」を便宜的に10,000円で計算して「複利」という2010年代に浸透した金融リテラシーを身に着けた計算式が華美の脳内で発動する。

10,000円を配当利回り5%の高配当米国株式を購入すれば円換算にして1年で500円の配当金がもらえて配当金を足して10,500円の複利運用をし続ければ1万円が10年後には16,289円に、20年後には26,533円、30年後には43,219円になっている。

配当金増額を見込んで30年の長期視点の年利7%で計算し直せば10年後には19,672円、20年後には38,697円、30年後には76,123円になっていると計算する。30年後の76,123円と続いているかどうかわからない友人との友情と比べるとどちらを取るか肉薄している。計算式は増え続けるという都合の良い計算にはなっているものの金融リテラシーを身に着けたに日本人的思考だと思います。ここで問題なのは友人との体験と金銭が比べられる対象になっているということでしょう。

びぶーん
びぶーん

「76,123円」と「30年後連絡も付かなくなっているかもしれない友人との友情」どちらをとるかですね。

 体験はひとときしか得られない貴重な時間だから結婚式などに呼ばれたらご祝儀を包んで喜んで行く。

この発想は日本が豊かであり、お金に貧困していないときの発想だろうと思います。

現に主人公の華美は比べてしまっている。

「比べられない体験」「生命の危機に瀕するお金の減少」と比較する対象となっていることには30年前の若者では驚きだろうと思わざるを得ないです。

 また、年収250万円の華美の彼氏も250万円で奇妙なオンラインサロンにハマっている。

月5,980円の会費を払って今の生活を抜け出したいというイケメンの彼氏にシンパシーを持つ人も多いのではないでしょうか?人生に一発逆転はないにしろ、有利なポジションを取って置けば生き残る確率は高いだろうという生存本能はオンラインサロンで放つ「貨幣社会の崩壊」の提唱に希望を見ています。

「お金はなくなる」という言葉に希望を見るのはお金を持たざる者だからです。

お金を持たざる者が将来に「希望」を見るために取るふたつの行動が羽田圭介のPhantomには表れていると思います。

  • 「複利」を活かして資産形成
  • 「貨幣制度の崩壊」への期待

この2つのアプローチから現代を生きる若者への救いを求める渇望を提示しているのが本書「Phantom」です。

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人間がお金に変わっていく

 何か大きな存在が自分たちを生きづらくしていて、今日や明日は生きられるだろう。でも好きなことはできない。10年後はどうなっている?老後はどうなっているのか?

考えれば考えるほど不安になっていく現代において人々が求めるのは生存できる情報による救いなのだと思います。

ある人にとっては「複利」を活かして資産形成をすることだったり、ある人にとっては「貨幣制度の崩壊」を期待することによって自分を保つことだったりするということです。

主人公の華美は年収250万円の収入を創り出してくれるマネーマシーン5000万円を年利5%で運用すると配当金だけで250万円を得ることが出来る分身を創り出すことに一生懸命です。

自分の分身が働いてくれるなら自分が仕事をなくしても、病気になっても、老後も大丈夫だろうと考えています。この問題点は分身の本体である華美自身の体験が減っていくことです。

楽しいと思えるようなことや、おいしいと思える食べることを放棄してマネーマシンという分身を創り出しているとしたら華美自身はどこに行ったのでしょうか?

本来一番大切なはずの生身の人間がマネーマシンに移り変わっていくとするならば、これから生きる命はお金という血液になってマネーマシンを動かす、ガソリンとなって燃焼されていく運命にあるのが華美だともいえるでしょう。

もはや、人間がお金に変わっていく。

お金を使う立場である人間がお金に操られて原油となり命の時間を燃焼させてお金を肥やしていく。

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分断の愉悦から抜け出せなくなっていく

一方で、「貨幣制度の崩壊」を論じるオンラインサロンにハマる彼氏もそこに自信の不安を払拭してほしいという救いをオンラインサロンに求めています。

新しいメディアのスタイルであるオンラインサロンを体験している愉悦と遅れた貨幣制度という言葉から自分が最先端を行っているという少しの優越感が「あの人は知らないけれど、私は知っている」という緩やかな差別を創り出し、分断は共同体の結束力を強固にして風通しの悪くなった集団は情報の新陳代謝が遅れて外圧への防御だけが強くなっていきます。

お金からの解放を謳いながら、富むのはトップの人間で「お金持ちがさらにお金持ちになる」という資本主義を体現したコミュニティの居場所を安寧の地にしてしまえばホメオスタシスから変化への強烈な反発を喰らって信じる救いへと走り出していく。

分断の愉悦から抜け出せなくなっていく。

羽田圭介のPhantomは分かりやすく低所得若年者の希望への走り出しを捉えている小説です。

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羽田圭介Phantom:まとめ

読み終わって感じたのは羽田圭介さん自身も貨幣制度に疑問を持ちつつも「お金」の世の中で生きていくしかないという「あきらめ」と、お金って何だろう?という「問題再定義」です。それを華美と彼氏を使って物語にしていました。

読みやすく、エンターテイメントとして楽しむことも良いでしょうし、X(旧Twitter)の株クラに馴染みのある方なら前半は「わかるわかる」のオンパレードなので株クラ「あるある本」としても楽しめます。170pくらいの中編小説なのでボリューム的にも読みやすいですよ。

羽田圭介Phantom「お金」に疑問を持つ方も本を読んで楽しみたい方にもおすすめの一冊です。

最後までお読み下さりありがとうございました。

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