「台湾有事」とは、中国が台湾に対して軍事侵攻するシナリオを指す言葉です。

日本にも影響があるって聞くけどどんな影響なのか怖いですよね!
中国は台湾を「不可分の領土」である「核心的利益」と位置づけており、「一つの中国」のもと、台湾独立に対しては軍事行動の可能性を中国的に合法化する「反分裂国家法」を2005年に制定しています。
すなわち、中国国内ではいつ台湾に軍事的行動を起こしてもいいようになっているということですね。

この問題は日本にとって「対岸の火事」ではない!ことが日本にとっての問題になっています。
本記事ではリスクが高まるとみられる台湾有事は、どのような事態が想定され、日本が抱える致命的なリスク、そして政府が進める「有事の備え」を分かりやすく解説します。
台湾有事:具体的に何が想定されているのか?
台湾有事とは中国が台湾に対して軍事侵攻するシナリオのことです。そのシナリオはだれが書いたのでしょう。

有力シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)のレポートのことね!
アメリカ・ワシントンの有力シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)は、2023年1月に発表したレポート「次の戦争の最初の戦い」において、台湾有事における中国とアメリカ、自衛隊などの戦闘を詳細にシミュレーションしました。
CSISは、2026年に中国が台湾に侵攻するという想定で、米軍、自衛隊、中国軍などの戦闘を詳細に24通りのシミュレーション(ウォーゲーム)で分析。このシミュレーションは極東地域の地図上で航空部隊や艦隊のコマを動かす手法にて想定しました。
ウォーゲームの結果、おおむねの場合で中国の台湾進攻は失敗するものの、22例で侵攻失敗、2例で中国勝利という結果が示されました。

このシミュレーションで、中国が勝利する結果となった2つのシナリオが日本にとって大問題なのです!!
中国が勝利する結果となった2つのシナリオ
シミュレーションで、中国が勝利する結果となった2つのシナリオは、以下の通り。
- 米国が参戦しない場合
- 日本が完全中立を守り、在日米軍基地でのアメリカの作戦行動を許可しなかった場合
この分析から、台湾を防衛するための条件の一つとして、在日アメリカ軍基地の使用が「必須」であると指摘されています。

日本が参加しない場合、中国の台湾侵攻が成功するってびっくりですよね!
甚大な兵器と人的な損失
CSISのシミュレーションでは、中国の侵攻が失敗に終わるシナリオにおいても、日米中いずれも多くの艦艇や航空機を失うと分析されています。
2022年資料に基づく予測平均値として、以下のような大規模な損害が想定されています。
| 国家 | 艦艇 | 航空機 | 死傷者 |
|---|---|---|---|
| 中国 | 138隻 | 155機 | 約2万2,000人 |
| 米国 | 空母2隻、水上艦7~20隻 | 270機 | 約6,900人 |
| 日本 | 26隻 | 122機 | ※記載なし |
アメリカは、イラクやアフガニスタンにおける20年に及ぶ戦闘で出した犠牲の半分を、台湾有事ではわずか3週間で出すことになると報告書は述べています。

何とか台湾有事を実現しないようにできないものかしら…。
日本の「致命的なリスク」:「2つのコメ」と継戦能力
台湾有事が日本に与える影響は、軍事的な損害だけにとどまりません。日本の経済活動と国民生活の維持に不可欠な「2つのコメ」、すなわち「産業のコメ」である半導体と、「命のコメ」である食料(およびエネルギー)の供給途絶リスクが高まります。
産業のコメ:半導体供給の途絶
台湾は、世界中から委託を受けて半導体生産を一手に引き受けており、特に台湾積体電路製造(TSMC)の存在は圧倒的ですよね!
- 台湾の半導体の受託生産は、2020年時点で世界シェアの7割を占めています。
- 特に最先端ロジック半導体の製造工場(線幅10nm以下)の92%が台湾に立地しています。
もし台湾有事が発生し、米中が交戦すれば、TSMCといえども生産ラインはほどなくストップすると想定されています。これは、半導体の製造装置や化学薬品、エンジニアリングサービスが日米欧のハイテク企業群に依存しているためです。有事の結果、世界的な半導体供給の途絶が起き、日本の製造業にとって計り知れない経済的影響をもたらします。
命のコメ:食料・エネルギーの危機
日本の食料供給は、肥料や農薬の生産、輸送、加工、冷蔵・冷凍といったあらゆる場面で石油などのエネルギーに大きく依存する「エネルギー多消費型」です。

日本はありとあらゆる品を輸入してまかなっていますもんね!
台湾有事により日本の海上交通路が危機にさらされ、エネルギー供給が大幅に減少した場合、普段享受している食料供給は全く機能しなくなることを覚悟しなければなりません。
現在の日本の食料備蓄は、コメが100万トンあるのみで、これは国民1人あたりわずか8キログラム、約2週間分にしかなりません。飢え死にすることなく1年間生き延びるためには、コメだけでも1人あたり200キログラムの備蓄が必要だと指摘されています。
日本政府が備える「有事の備え」
日本政府は、台湾有事を「日本及び国際社会に対する最大の戦略的な挑戦」であるとし、有事を念頭に置いた具体的な備えを進めています。

台湾有事は起こさないのが一番だけど備えておかなきゃね!!
住民避難計画と地下施設整備
台湾に最も近い日本の島である与那国島は、台湾北東部の宜蘭からわずか110キロメートルしか離れておらず、有事の影響が直撃する懸念があります。
- 広域避難計画: 日本政府は、台湾有事を想定し、先島諸島の住民およそ12万人を九州・山口地方8県へ分散避難させる計画を打ち出している。
- 滞留型避難施設: 避難が困難な住民のために、地域内に「特定臨時避難施設」(滞留型避難施設)の整備が進められている。与那国町では、新庁舎の地下に約200人分の避難スペースを備えた施設が2027年末までの運用開始を目指して整備される予定。この施設にはトイレ、シャワー、キッチンなどが備えられ、約2週間の生活が想定されている。
- 南西シフト: 日本は、台湾情勢の緊張が続く中、2016年以降、与那国島、宮古島、石垣島に陸上自衛隊駐屯地を新設するなど、自衛隊の「南西シフト」を進め、南西諸島の防衛体制を強化している。

何かあった時に備えて避難場所を設備したりしてるんだね!
「存立危機事態」の明言
2015年の安全保障関連法で新設された「存立危機事態」とは、日本と密接な関係にある他国への武力攻撃の結果、日本の存立が脅かされる明白な危険が迫る事態を指します。
歴代政権はこの見解を明確にすることを避けてきましたが、高市早苗総理(当時)は2025年11月7日の答弁で、台湾有事が「存立危機事態」にあたる具体例を問われ、戦艦を使った武力行使を伴うものであれば「存立危機事態になりうるケース」だと、歴代総理として初めて可能性を明言しました。
これは、状況によっては日本が集団的自衛権を行使し、米軍とともに武力行使に踏み切る可能性を示唆するものであり、中国に対する強い牽制となりました。

ちょっと怖いね。

そうだね。一方で「台湾有事」はアメリカ側から見た世界の視点であり、台湾視点だと違う見方だよって専門家もいらっしゃるんだ。
台湾有事:台湾の実情
「戦略国際問題研究所」(CSIS)レポートで広く認識されている軍事的な危機感やシナリオと、現場の台湾国民や軍関係者が抱える実情との間に大きなギャップがあると語るのはジョンズ・ホプキンス大学で安全保障を専門として博士課程に在籍している佐々木れなさんは語ります。
1. 台湾軍の戦闘能力と実態
台湾陸軍の関係者からの声として、台湾の防衛力について厳しいという実情を聞くことが出来ます。
- 装備の不統一と訓練不足:台湾陸軍にて使用する銃の種類が多く、弾薬も異なり、装備がバラバラであることが指摘されており、訓練が満足にできていない実情。
- 兵士の経済的負担:兵士が週末に帰宅する際の交通費が軍部から支給されておらず、「毎週マイナス」になっている財政的な実情。
- 戦闘への消極性:台湾の国民や兵士の本音として、ウクライナのように「みんな応援してくれたら戦う」積極的に中国と戦いたくない。

台湾の兵士だって戦いたくないよね!
2. 危機慣れと国民の意識
台湾の市民は、ワシントンや日本などで見られるような高い緊張感とは違う意識を持っています。
- 危機慣れと温度差: 台湾の人々は長期間にわたり緊張状態が続いていたため、「危機慣れ」している。危機的な状況についても「緩く」話す傾向があり、アメリカ人が台湾を「いつ攻められてもおかしくない島」と見ているのとは大きな温度差がある。
- 内政問題の優先: 台湾の若者世代を中心に、中国との両岸関係(両岸関係)よりも、家賃の高さや失業率など、自分たちの生活に関わる国内問題の方が重要視されています。

1950年代くらいからずっと危機的状況だって言われ続けたら「危機慣れ」して平常運転にもなってきますよね。
3. 有事のシナリオと日本の期待
アメリカのシンクタンクである「戦略国際問題研究所」(CSIS)レポートが想定する有事のシナリオと、台湾が日本・アメリカに対する期待には、内容にギャップがあります。
- 「バチバチ系」シナリオへの懐疑: 日本で議論される台湾有事のシミュレーションやウォーゲームは、アメリカのレポートを参考にした、激しい軍事衝突を想定したものになりがちだが、台湾の安全保障関係者に聞くと、「そんなバチバチのやつをやるわけがない」国連決議などを通じた非軍事的な圧力や、法的な手法を使ったプレッシャー(例:ナウルの台湾との断交など)がかけられるシナリオを考えている。
- 外部を巻き込む戦略: 台湾の現地の人々は、自国の力だけでは戦えないため、アメリカと日本を「巻き込みたい」という戦略を持っている。
- 日本への過剰な期待: 世論調査の結果から、台湾の人々は有事の際にアメリカよりも日本が助けてくれると過剰に期待しているという状況が判明している。台湾の安全保障関係者は、日本に「存立危機事態」を発動してもらい、日本ができる支援の幅を広げることを期待しているものの、それが現実的に難しいことも認識している。

実際に中国が台湾を取りに来るとしても強行的な軍事行動をとるよりももっと違うアプローチで台湾を取りに来ると思っているのね!
4. 中国の「賢い」非軍事的な手法
中国が軍事的な行動だけでなく、より「賢い」手法を用いて台湾への影響力を高めている現状についても佐々木れなさんは言及していますね。
- オンライン裏カジノの利用: 選挙期間中、オンライン裏カジノに中国から資金が流れ込み、そこが票操作や賭けの調整のプラットフォームとなり、中国が応援したい候補者への投票を調整しようとしたという情報がある。<あくまで情報です>
- ディスインフォメーション戦略: TikTokなどを使い、選挙後に「選挙が盗まれた」といった動画が拡散されるなど、選挙の正当性そのものに疑問を投げかけるような情報やナラティブ(物語)が続いている。

軍事行動もそうだけどもっと「賢く」台湾を攻めてくるだろう。もうそれは浸食され始めているかもしれないということですね!
5. 日本への情報流入の偏り
日本が得る台湾有事の情報は、台湾の具体的な実態を反映しにくい構造的な課題を抱えている可能性もあります。
- アメリカ経由の情報: 日本に流入する情報源は、アメリカの関係者からの情報が中心になりがち。この情報には、アメリカが軍事予算を増やしたい、あるいは武器を売却したいという動機に基づいたシナリオが反映されている可能性もある。

なるほど、偏りのある情報で「台湾有事」を見ているかもしれないってことね!

この機会に「台湾有事」に対する自分の意見も持つためにおすすめの本を4冊選びました!
台湾有事に関する新しいおすすめ本
1. 『「台湾有事」は抑止できるか -日本がとるべき戦略とは-』
- 著者・編者: 松田康博 編、福田円 編、河上康博 編 ほか
- 出版社: 勁草書房
- 出版年月: 2024年10月
- ポイント:
- 台湾や安全保障の第一級の専門家と自衛隊元幹部が結集し、多角的に分析しています。
- ウクライナ戦争の教訓を踏まえ、日本が「やるべきこと」を具体的に導き出すことを目的としています。
- 抑止の条件や、日本にとっての戦略的価値などが深く掘り下げられています。
2. 『台湾有事と日本の危機 習近平の「新型統一戦争」シナリオ』
- 著者: 峯村健司
- 出版社: PHP研究所(PHP新書)
- 出版年月: 2024年2月
- ポイント:
- 著者は長年中国を取材してきたジャーナリストで、習近平の目線に立った「新型統一戦争」の極秘シナリオをシミュレーションしています。
- 日本政府や自治体の無策ぶりを指摘し、日本が最大の被害国になりかねないという危機感を訴えています。
3. 『日本人が知らない台湾有事』
- 著者: 小川和久
- 出版社: 文藝春秋(文春新書)
- 出版年月: 2024年1月
- ポイント:
- 軍事・安全保障の専門家による、日米の戦略などを踏まえた分析です。
- 日本人が陥りがちな誤解や、有事の際に日本が直面する具体的なリスクについて解説しています。
4. 『中国と台湾 危機と均衡の政治学』
- 著者: 松田康博
- 出版社: 慶應義塾大学出版会
- 出版年月: 2025年7月
- ポイント:
- 台湾研究の第一人者による、両岸関係(中国と台湾の関係)の歴史的変遷と、それがどのように「危機と均衡」を生み出してきたかを深く分析するものです。
- 今後のシナリオ・プランニングにも触れており、学術的な視点から現状を理解するのに役立ちます。

新書を2冊入れさせていただきました!どの本も「台湾有事」に対する解像度を高めるおすすめの本となっております!
まとめ
台湾有事は、軍事力の比較 や外交的な駆け引き だけでなく、日本の国民生活と世界経済の根幹を揺るがす重大な問題です。
CSISのシミュレーション結果が示すように、在日米軍基地の使用を含めた日米の協力体制が、中国による侵攻の抑止と、有事の際の台湾防衛における必須条件と考えられています。
また、日本が持つ半導体技術や輸入の海上交通路の脆弱性、食料備蓄の課題といった「2つのコメ」に関するリスクは、日本の継戦能力と国民の生存に直結する致命的な問題となっています。

台湾有事を起こさないようにしたいわね。
台湾有事を回避するためには、抑止力強化とともに、外交上の「あいまいさ」を駆使した粘り強い外交努力が不可欠です。
日本は、戦争に巻き込まれるか、日米同盟を破綻させるかという究極の選択を迫られないよう、今後も有事に備えるための制度や態勢の構築を行っていく継続した力が必要です。
起きないことが一番ですが、万が一それに備えるためにも読みやすいおすすめ本を読んで自分なりの視点を持てるようにしたいですね。
最後までお読み下さりありがとうございます。




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