「世界秩序が変わるとき」を読んで要約。日本終わったと思っていたけどまさかの黄金時代到来!

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止まらない物価高。上がらない賃金。「日本に未来なんてない」——そんな閉塞感を感じている人は、私だけではないはずです。

正直に言うと、この本を手に取ったのは「お金儲けのヒントが書いてあるんじゃないか」という下心も大きかったです。タイトルに「ゲームチェンジ」とあるし、帯には「ソロスを大儲けさせた伝説のコンサル」とある。なにか情報がつかめれば少しは儲けることが出来るかも、とも思いつつページをめくりました。

結論から言うと、そういう本ではありませんでした。自分が儲かる方法なんて一ミリも書いていないです。でも読み終わったとき、「日本、もしかしたら今後すごいいいポジションなんじゃない?本当に良くなるかもしれないな」という気持ちになっていました。

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第1章〜第4章は「前置き」だと思って読む

この本、正直なところ難解です。経済や投資の話が続くので、途中で「え、何の話してるんだっけ?」となることも何度かありました。

大学の教授の新書でもないので文章がつらつらと並ぶ平坦な読み口なので読みやすい分、退屈であり、世界の経済状況、政治など好きじゃない人は興味ないんだろうなと思って読んでいました。

ただ、第1章から第4章は第5章を読むための”権威付け”だと理解してから読むと、ずいぶん楽になります。著者の斎藤ジンさんがどういうキャリアを歩んできたか、新自由主義という世界秩序がどう動いてきたか、そして「失われた30年」の本質とは何か——それらが積み重なって、第5章「強い日本の復活」という結論に至る構成になっています。

日本人にとって一番熱くなれるのは間違いなく第5章ですが、そこだけ読んでもピンとこないので、1〜4章は飛ばさず読むことをおすすめします。

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なぜ今、日本が経済成長するのか

本書の核心は「地政学からの日本の立ち位置」です。

著者は、日本の戦後の経済成長はアメリカの「投資」によって支えられてきたと記述してあります。朝鮮戦争では地理的に近い前線の隣国として、東西冷戦ではソ連への対抗軸となる隣国として、日本が強くあることがアメリカの国益にもなっていました。だからアメリカは日本に肩入れしてくれた——というのが著者の見立てです。

教科書にも載っている「朝鮮特需」や「高度経済成長」は、偶然でもなく日本人の勤勉さだけでもなく、アメリカという覇権国が「日本に強くいてほしい」と思ったタイミングと重なっていたというわけです。事実アメリカのお金は日本に流れ込み日本は潤っていました。今回もGAFAMや半導体関連の企業が日本に投資していると書いてあります。

ところが1990年、バブルが崩壊したのと同じ頃に東西冷戦も終わり、ソ連が崩壊します。資本主義の「勝利」とともにアメリカは唯一の覇権国となり、日本がわざわざ強くある必要がなくなった。そこから約30年、日本は「生かさず殺さず」の状態に置かれ続けた——と本著を読んで解釈しました。

そして今、その構図が再び動き始めている。理由は中国の台頭です。

アメリカは「もしかしたら覇権国の座を中国に奪われるかもしれない」という現実と向き合い始めています。そうなれば、中国に地理的にも近く、アメリカと友好関係も深い、民主主義国家である日本が再び重要な意味を持ってくる。朝鮮戦争のとき、冷戦のとき、そして今——アメリカが日本の強さを必要とするタイミングが、また来たというのです。

なるほど、日本人が頑張っただけで高度経済成長が得られたわけではなく、アメリカや各国の手助けもあって日本が強くなるタイミングだったんだと妙に納得しました。インフレや円安を「日本の弱さ」としか見ていなかったですし、日本は人口動態が「団塊の世代」を主なボリュームゾーンにして逆三角形を描く典型的な成長しない国家だとあきらめていた自分に少し希望の光を見せてくれる思いです。

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日本人の「おもてなし」が実は足を引っ張っている

本書でもう一つ面白かったのが、日本の労働生産性の話です。

日本の労働生産性はアメリカの約0.6倍と言われていますが、著者はその理由を「日本人が怠けるようになったから」とは言いません。むしろ逆です。

著者のアメリカ人の同僚がこんなことを言ったそうです(本書の内容をもとにした意訳ですが)——「信じられるか?日本のホテルに行ったら6人のスタッフが荷物を運んで、案内してサービスしてくれたぞ」と。

アメリカの視点から見ると、日本のホスピタリティは「過剰」に映るのだそうです。一人のお客に何人ものスタッフが対応する。それが「おもてなし」として当たり前のように日本では行われていますが、、生産性の観点からは非効率そのものです。

逆に裏を返せば、これは「伸びしろ」でもあると本著では学ぶことが出来ます。DXやAI活用が進み、働き方の最適化が進めばその分だけ生産性が上がり、それが経済成長につながる——投資家たちはそこに目をつけているというのです。

「日本のおもてなしが生産性を引き下げており、またそれが伸びしろでもある」という逆説的な話は、読んでいてなるほどと唸りました。確かに言われてみればそうかもしれないです。接客業では2,3人が一人のお客様に対して接客する場面も多くあり、「最適化」しなければ一人の生産性はあがらないよなと思う場面も多々あります。過剰なサービスを世界標準に合わせて行けば生産性は上がっていくのは必然です。

その場合、日本の「おもてなし」文化がどんどん廃れていくことは考えられますが、近年ではロボットがファミレスで配膳してくれたり、注文をするのもタッチパネルだったりしますよね。どんどん生産性向上のために変わってきているのを目の当たりにしているはずです。

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経済成長は「いいことだらけ」ではない

ただ、本書は「日本が成長するから黄金時代の未来が待ってるよ!」という単純な話でもありません。

著者が冷静に指摘するのが、貧富の格差の拡大です。経済成長が起きれば、低所得者の生活水準は楽になるかもしれないですが、高収入の人の資産が増えるスピードは現在の増え方ではなくあらに加速して上がると訴えています。つまり、日本国の経済は指標として高水準のパフォーマンスを出す経済成長を見せるものの、格差はさらに広がるということです。

著者自身はその格差拡大を「良いこと」とは思っていないとはっきり書いています。ただ、それが資本主義なのでしょう。「お金持ちはさらにお金持ちに、貧乏人は息をするのもお金がかかる」という差が開くのは資本主義の基本だと思っています。

「世界がこう動いているという事実を知った上で、あなた個人はどうポジションを取るか」——この本が最終的に問いかけているのは、そこです。

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著者自身のエピソードが印象的だった

引用:Amazon

本筋とは少し外れますが、著者の斎藤ジンさんが自分自身のことについて触れている場面が個人的にとても印象に残りました。

最初この本を見たときは熟練の女性が書いてるんだなあと思っていましたが、男性が女装している帯でした。全く分からなかった!にほんで女装している人を見かけると都会ではそう珍しくにかと思いますが、田舎ではまだまだ「変な人」扱いです。

生物学的には男性だけれど、性自認は女性である斎藤さん。日本にいた頃はそれをカミングアウトできなかったのに、アメリカでカミングアウトしたら「なんでもっと早く言ってくれなかったの?」「あなたはあなたのままでいい」「あなたが着たい服装をきてね」と言われたというエピソードです。

経済の話をしている本の中でこのエピソードが出てきたとき、「あ、この人が本当に伝えたいのは経済やお金の話だけじゃないんだな」と思いました。社会や経済が変わるということは、個人が自分らしく生きられる権利が変わるときでもある。LGBTQの性的マイノリティに対するメッセージも静かに込められた本著です。

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まとめ

この本を読むと「これから日本の時代っしょ!」と前向きに考えられるようになります。

この本を読んで「すぐ投資に活かせる知識が得られた!」というわけではありません。正直、難しい箇所もあるし、途中で「これ本当のこと?」と半信半疑になる場面も正直あります。

ただ、「日本がこれから経済成長する」というストーリーが、単なる希望論ではなく地政学的な根拠と歴史的なパターンに基づいて語られているのは確かです。朝鮮特需、高度経済成長、そして今——同じ構図が繰り返されようとしているという視点は、他の本ではなかなか出会えないものです。

物価高や政治への不信のため「もう日本は終わりだ」と思う毎日の中で、少しだけ「日本、まだいけるかもな」と思える本書は読む価値がありました。重版を重ねてAmazonベストセラー1位を獲得しているのも、もしかしたら、最初はお金の勉強をしようと思って手に取って、最終的に日本への希望がどんどん湧いてくる本だったからなんじゃないだろうかと思います。

難しそうと感じている方こそ、第5章だけでも読んでみてほしい。そして余裕があれば最初から通して読むと、著者の言いたいことがじわじわと腑に落ちてくるはずです。気になった方はぜひ手に取ってみてください。

この記事を書いた人

bibroom

図書館司書資格保有|心理学専攻卒|元宝石店員|3児の父

働きながら通信大学で心理学を学び、 図書館司書の資格を取得。現在は3人の子育て中。 学び・教育分野の発信者。年間200冊以上の本を子どもたちと読み続けながら、 「本当に子どもの心に刺さる一冊」を探し続けています。 本のおすすめから司書を目指す人への情報、 エンタメ・エッセイまで人の心を動かすものすべてをテーマに執筆しています。

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