「芦田愛菜ちゃんって、なんであんなに言葉がきれいなんだろう?」
そう思ったことがある人も多いのではないでしょうか。
実はその秘密は、彼女の“読書量”にあります。小学生の頃には年間100冊以上を読むこともあったという芦田さん。そんな彼女が選ぶおすすめの本には、知性だけでなく、感性を育てるヒントがたくさん詰まっています。
この記事では、芦田愛菜さんの読書遍歴や、著書『まなの本棚』から見えてくる珠玉のおすすめ本を7冊紹介していきます。
『むらさきのスカートの女』今村夏子
今村夏子さんの『むらさきのスカートの女』は、読者に多様な解釈を促す魅力的な作品。物語は、「むらさきのスカートの女」をストーカーのように観察する「わたし」(黄色いカーディガンの女)の一人称視点ですが、読み進めるにつれて「変なのはこちら側だな」と語り手の異常性が際立っていく点が特徴的です。
この作品の大きな魅力は、二人の女性が別人なのか、それとも語り手の妄想が生み出した同一人物の側面なのかという曖昧な解釈が可能なことです。語り手の異常な執着心や常軌を逸した行動、そして一人称にもかかわらず「神の視点」のようにすべてを見通す語り口が、読者に独特の不穏さと面白さをもたらします。結末も明快な解決は提示されず、表紙に描かれた「一つのスカートに二人分の脚」のイラストが、作品の多層的なテーマを象徴していると考察されています。芥川賞選考委員からも、「狂気を突き抜けた哀しさ」や「人間の迷宮」を描き出す今村夏子の非凡な才能が高く評価されています。
◦ 芦田愛菜さんは、今村夏子さんの作品である『星の子』を読んだ後にこの本を続けて読み、「やはり『境目にいる人』が描かれているなあと感じて、とても印象的でした」とコメントしています。他者への執着やコミュニケーションの奇妙さを描いた独特の作風が特徴の芥川賞受賞作です。
『星の子』今村夏子
病弱な娘を救うため「あやしい宗教」に傾倒し、家族の形を歪めていく両親のもとで育つ林ちひろの物語です。その人間の内面を深く掘り下げる作風が特徴的で、主人公ちひろを「境目にいる人」と捉える芦田愛菜さんのコメントが示すように、信仰や他者の思いによって物事の見え方が変わる繊細な心理が描かれています。
物語は明確な解決を示さず、読者の想像に委ねられる結末が「幸せであってほしい」という希望を抱かせます。今村氏の作品は「知らざる人の目」を通して見えてくるものがあると評され、共感を深く考えさせる純文学としての魅力にあふれています。第157回芥川賞候補にもなり、第39回野間文芸新人賞を受賞した一作。
◦ 芦田愛菜さんが主演を務めた映画の原作となった小説です。彼女はこの本について、「『境目にいる人』だと思った」「正しいか間違っているかの判断だけでなく、自身や周りにいる人の想いによって見え方が変わってしまう」と語り、物事の多面的な見方を教えてくれた本として挙げています。信仰や家族の愛を描き、人間の内面を深く掘り下げる作品です。
『かがみの孤城』辻村深月
辻村深月さんの『かがみの孤城』は、学校に居場所を失い心を閉ざした中学生こころが、鏡の向こうの不思議な城で、自分と同じ境遇の6人の仲間と出会う物語です。彼らは城に隠された願いを叶える鍵を探す中で、互いに心を通わせ、絆を深めていきます。
本作の大きな魅力は、登場人物たちが実は異なる時代に生きていたという巧妙な仕掛けと、城の主「オオカミさま」の正体が明かされる際の深い感動にあります。不登校やいじめといった現代的なテーマを真正面から描いており、学校に行くべき時間と同じ午前9時から午後5時までしか城に滞在できないルールは、現実世界への「リハビリ」を促しているかのようです。
感想として、「ガチ泣き」「涙が止まらない」といった声も多く、居場所を求める全ての人に寄り添い、勇気を与えてくれる傑作だと感じました。
◦芦田さんはこの本を「好きすぎて、あまり人に教えたくない」と語るほど大好きな作品で、辻村深月さんという作家に出会うきっかけとなった特別な一冊だと述べています。2018年には本屋大賞を受賞しています。
『騎士団長殺し』村上春樹
村上春樹さんの『騎士団長殺し』は、肖像画家の「私」が妻との別れを機に、アトリエで見つけた日本画《騎士団長殺し》を巡る壮大な長編小説です。現実と非現実が混じり合う独特な世界観が展開され、「イデア」や「メタファー」といった抽象的な概念が物語の核を成しています。
特に印象的なのは、タイトルにもある「日本画」が単なる絵画に留まらず、人間の精神を蝕む「悪しきもの」の「移動ルート」を象徴している点です。この絵は、画家・雨田具彦がウィーンでの経験や南京大虐殺といった歴史的事件の中で感じた「救えなかった無念」を具現化したものであり、主人公は自身の「デタッチメント」な性格を通して、その「悪しきもの」や内なる暗闇に潜む「二重メタファー」(正しい思いを食い尽くす存在)と対峙していきます。
物語は、主人公が過去の困難を乗り越え、新たな家族との関係を再生していく姿を描きながらも、明確な答えを提示せず、読者に深い解釈を委ねる村上作品らしい余韻を残します。文学的な深みと複雑な心理描写が融合した、まさに「村上ワールド」の真骨頂とも言える魅力的な一作でした。
◦ 芦田愛菜さんは「こんなに読み応えがある本があるんだと驚いた」「想像力がすごく刺激される本で、ぐいぐいと本の世界に引き込まれました」と語り、村上春樹さんの作品に深く魅了されるきっかけになったと語っています。
『七〇歳年下の君たちへ』五木寛之
五木寛之氏の『70歳年下の君たちへ』は、1932年生まれの著者(当時86歳)が、70歳年下の灘高生や早稲田大学生へ行った講演をまとめた講義録です。本書は、人生は不条理で挫折の連続であると説き、「敗北を恐れず、勝利に甘えるな」といったメッセージを自身の経験を通して伝えています。五木氏は、過酷な引き揚げ体験や度重なる休筆など、自らの人生の困難を語ります。
本書は、「視線はできるだけ低く」「ユーモアと感受性で生き延びる」「不変な真理などない」「それでも人間を信頼する」といった、人生の危機からの脱出術や知恵を柔らかく示します。心が挫けそうになった時、即効性のある方法はないとしつつも、「後ろ向きに前へ歩む」(背進)ことで、思い出を反芻し、人に話すことが回復へ繋がるという具体例が印象的です。芦田愛菜さんもこの本を読み、「肩の力を抜いていいんだと励まされた」と共感を表明しています。著者の豊かな人生経験と深い洞察が詰まった、読者に心の支えと多角的な視点を与える価値ある一冊です。
◦ 芦田愛菜さんはこの本を読んで、「いろいろな考え方を教えてくださり、面白かったです。また、肩の力を抜いていいんだよと励まされている気もしました」とコメントしています。
『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』
山中伸弥氏の著書『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』は、ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中教授の半生とiPS細胞研究の道のりを描いた作品です。神戸大学医学部を卒業後、整形外科医として手術が苦手で「ジャマナカ」と呼ばれた挫折や、米国留学からの帰国後に「アメリカ後うつ病」を経験するなど、数々の苦難を乗り越えてきた彼の人生が率直に綴られています。
本書からは、山中教授の人生のモットーである「VW」(ビジョンとワークハード)の重要性、そして「他の研究者の3倍は働いた」という驚異的な努力家の一面が伝わってきます。また、失敗を恐れず、むしろそれを学びや成長の機会と捉える「人間万事塞翁が馬」という前向きな哲学が示されています。
iPS細胞の誕生秘話や再生医療の未来への展望も分かりやすく解説されており、その優しい語り口は中学生でも読めるとされています。芦田愛菜さんもこの本を読み、山中教授の「努力を楽しむ」姿勢に「魂が震えた」と感銘を受けたと語っています。単なる科学の解説書にとどまらず、逆境を乗り越え、自己のビジョンを追求する人生の指針を与えてくれる一冊です。
◦ 芦田愛菜さんは、努力を楽しむ山中教授の姿勢に感銘を受けたそうです。「これから先辛いことがあっても、これはチャンスかもしれないと思えるようになれれば」と、自己啓発にも繋がる学びを得たことを明かしています。
『ツナグ』辻村深月
辻村深月氏の『ツナグ』は、一度だけ死者との再会を叶える「使者(ツナグ)」を巡る感動的な連作長編小説。2012年に吉川英治文学新人賞を受賞し、同年映画化もされました。物語は、故人への未練や後悔を抱える生者が、使者の仲介で一時的に死者と再会する様子を丁寧に描いています。例えば、突然死したアイドルを慕うOL、亡き母に病気を告げられなかった息子、亡くなった親友への嫉妬に苦しむ女子高生など、それぞれの「心得」と題された章で、心揺さぶる人間模様が紡がれます。
本作は、温かく光が射すような「白辻村」の系譜に属しながらも、人間の感情の複雑さや不完全さも深く掘り下げています。特に「親友の心得」の章では、友情の裏に潜む葛藤が描かれ、単なる感動に終わらない奥行きを与えています。最終章では、仲介者である少年自身が、誰と再会すべきかという苦悩に直面し、「死者は、残された生者のためにいる」という主題が浮き彫りになります。
芦田愛菜さんも本書に強く感銘を受け、彼女にとって読書好きになる扉を開いた一冊でもあります。読後、読者は大切な人との絆や人生における邂逅の意味を深く考えるきっかけとなるでしょう。
• 概要と芦田愛菜さんのコメント: この作品は、死者と生きている人々を再会させる「ツナグ」と呼ばれる使者を描いた感動的な連作長編小説です。芦田さんは、この本を「好きすぎて、あまり人に教えたくなかった本」と表現するほど、深い思い入れがあることを明かしています。また、辻村深月氏を「神様みたいな存在」と尊敬し、「大好きな作家さんに出会ってしまったと衝撃を受けた」と述べています。
まとめ
芦田愛菜さんが選ぶ7冊の本は、どれも感性や想像力を育ててくれる珠玉の作品ばかりです。現実と空想の境界、他者との距離感、命や家族、人生の意味――そうした深いテーマを中高生でも楽しめる形で教えてくれる名著ばかり。彼女の読書遍歴をたどることで、「どんな本が心を育てるのか」のヒントが見えてきます。
読書を通じて自分の世界を広げたい人に、ぜひ手に取ってほしい一冊が見つかるはずです。



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