公共図書館において、児童サービスは貸出業務と並んで非常に重要な役割を担っています。
なぜなら、子どもたちが読書を通じて自己の能力を育み、社会に関する知識を深めていくためには、その発達段階に応じた適切な支援が必要だからです。
この記事では、履修にあたり知っておきたい重要なポイントをわかりやすく解説していきます。
最初に児童サービス論を解説してから、さらに、児童サービス論でよく使われる阪本一郎の読書興味の発達段階(1950)と野口 武悟の読書興味の発達段階モデルについての再検討(2012)を要約します。
※ここで紹介している児童サービス論はあくまでも科目の中の一部になります。
児童サービス論とは?
児童サービス論とは、図書館における児童向けサービスの基本を学ぶ科目です。
特に「公共図書館」が子どもにどのようなサービスを提供すべきかを、子どもの発達段階や読書興味といった視点から考えるのが特徴です。
適切な児童サービスを行うためには,読書能力や読書興味の発達段階を理解していることが不可欠です。

子どもに絵本をオススメするには発達段階まで意識しないといけないんだね。

小学生でも6年間ありますし、文字の読めない幼児には絵で読んでもらうという意識も必要です。
この科目では、以下のようなテーマを学びます。
子どもの発達とは?
「発達」とは、人の心身の機能が成長し、成熟に近づいていく過程のことを指します。
はっ‐たつ【発達】
- 〘 名詞 〙 ( 「はつだつ」とも )
- ① 発育して完全な形態に達すること。また、それに近づくこと。身体や精神などが成長すること。
- [初出の実例]「聖人の道を学べば自然に知見開きて、材徳われと発達するものなり」(出典:太平策(1719‐22))
- 「即ち余が喉頭の腫物漸次発達して大に呼吸の促迫を起し来り」(出典:一年有半(1901)〈中江兆民〉一)
- ② 進歩して完全な段階に達すること。また、その段階に近づくこと。進歩発展すること。
- ③ 低気圧や台風などの規模が次第に大きくなること。「発達した低気圧」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について
子どもの発達には内的要因(遺伝や性格など)だけでなく、外的要因(環境、教育、社会的関係)も深く関係します。
図書館は、こうした外的要因のひとつとして、子どもの健全な発達を支える読書環境を整える重要な場といえるでしょう。
図書館司書にとってなぜ重要なのか
図書館司書は、単に本を貸すだけの仕事ではありません。
児童サービスは、子どもの発達段階に応じて、読書を通じて自己の能力を伸ばし、社会に関する知識を広げる活動でもあります。
特に子どもに対しては、本を通して学びや想像力、社会性を育むサービスを提供することが求められます。
また、子どもの発達は一人ひとり異なります。
そのため司書には、年齢だけでなく個々の興味や理解力をふまえた柔軟な対応力が必要となりますす。
児童サービス論は、こうした視点を身につける科目となります。

児童サービスを手厚くすることによって、大人になった時にも利用してもらえるように未来の利用者を育てる狙いもあります。
発達段階と読書興味の関係
阪本一郎が示した「読書興味の発達段階」は、児童サービスを考える上で基本となる理論です。
これは子どもの発達に応じて興味を持つ読書ジャンルが変化するという考え方で、以下の8段階に分類されます。
- 子守り話期
- 昔話期
- 寓話期
- 童話期
- 物語期
- 伝記期
- 文学期
- 思索期
これらを、一般的な発達段階である「幼児期」「児童期」「青年期」と照らし合わせて整理すると、より実践的に理解できます。
発達段階ごとの特徴と資料提供のヒント
幼児期(〜6歳)
この時期の子どもは、言葉を覚える時期であり、視覚と聴覚を通じて物語を楽しみます。2歳ごろから急速に語彙が増え、4〜6歳には勧善懲悪の昔話に興味を持ち始めます。絵本や読み聞かせに適した資料の選定が重要です。
提供のポイント:
- カラフルで視覚的に楽しめる絵本
- 繰り返しの多い構造の話
- 親子で一緒に楽しめる内容
児童期(6〜12歳)
6〜8歳では「寓話」や「逸話」など、短くモラルのある話を好む傾向があります。8〜10歳では「生活童話」によって自らの行動を考えたり、共感したりするようになります。10〜12歳になると、読書活動が活発になり、物語や冒険ものなど、読書の幅が広がります。
提供のポイント:
- 年齢に応じた文章量と内容の資料
- 自分と同じ年代の登場人物が出てくる物語
- 正義や友情、家族愛などをテーマにした作品
青年期(12歳〜)
12〜14歳は自己と社会との関係を深く考え始める時期です。伝記や職業関連の本に興味を持ちます。14歳以上では文学作品や哲学書、宗教書など、より深い思索を促す資料が適します。
提供のポイント:
- 主人公の成長を描いた小説
- 社会問題を扱った作品
- 考えるきっかけになるエッセイや評論

年齢といっても個人差があるのであくまでも目安にしかならないことを念頭に置きましょう。
資料提供の際の注意点
年齢だけでなく、個人差を考慮する
子どもの読書能力や興味は、年齢だけでは判断できません。
同じ年齢でも、読む力や興味の幅には個人差があります。
阪本の理論は参考になりますが、あくまで目安として柔軟に捉えることが大切です。
メディア環境の変化に対応する
阪本の理論が発表されたのは60年以上前であり、現代の子どもたちはテレビ、インターネット、ゲームなど多様な情報環境に囲まれています。
したがって、図書館もその変化を意識し、今の子どもたちに響く資料を選ぶ工夫が必要です。

阪本一郎さんが提唱したのが1950年なので少々古すぎますので、再検討をしている野口 武悟さんの論文を一読することもオススメです!
読書興味の発達段階モデルの再検討と現代的適応モデル
読書興味の発達段階モデルについての再検討(野口 武悟2012)については、約60年前に阪本一郎が提唱した読書興味の発達段階モデルを再検討し、現代のメディア環境や子どもたちの読書傾向に即した新たなモデルを構築しています。
旧モデルに含まれていた「昔話期」「寓話期」などの段階は、新たな子どもたちの読書実態には適合しない可能性が高いことを提唱しています。
提案された新モデル:5段階構成
阪本モデルと比較して平坦化された新しい発達段階モデルは、以下の5段階。
| 段階 | 年齢 | 特徴的な読書傾向 |
|---|---|---|
| a. 絵本期 | ~8歳 | 絵本を中心とした視覚的読書体験 |
| b. 童話期 | 6~10歳 | ファンタジーや物語性を楽しむ時期 |
| c. 児童文学期 | 8~13歳 | 長文への適応が進み、物語の深みを味わう |
| d. 大衆文学期 | 11歳~ | ミステリー、恋愛、冒険などの大衆向け小説に興味を持ち始める |
| e. ライトノベル期 | 13歳~ | イラスト付きで親しみやすく、現代的な内容に惹かれる |
このモデルは、より現代の子どもたちの実態(メディア多様化、ライトノベル人気など)に即しており、発達段階がなだらかに移行していく構成となっている。

1950年代と現代では情報を取得するのは本だけとは限らないもんね。

野口さん<2012>の読書興味の発達段階モデルについての再検討では、子どものメディア興味と読書傾向も調査されているよ!
■ メディアへの興味(年代別)
※最も人気なのは一貫して「テレビ」
| 学年 | 主な興味メディア |
|---|---|
| 小学生 | テレビ(71.3%)、本(60.4%)、ゲーム(58.7%) |
| 中学生 | テレビ(65.9%)、インターネット(52.4%)、マンガ(49.2%) |
| 高校生 | テレビ(57.4%)、ケータイ(52.0%)、マンガ(46.9%) |

こちらの集計は、2012年の集計となります。
■ 本のジャンルへの興味
| 学年 | 主な興味ジャンル |
|---|---|
| 小学生 | 児童文学(17.2%)、絵本(18.3%) |
| 中学生 | 大衆文学(50.8%)、ライトノベル(16.7%) |
| 高校生 | 大衆文学(57.3%)、ライトノベル(19.0%) |
→ 純文学の人気は1950年代と比べて著しく低下しています。
読書時間と冊数の実態
■ 一日の読書時間(平均)
- 小学生:16.6分
- 中学生:26.5分(中1が最長)
- 高校生:13.3分(高3が最短)
→ 高校生の63.1%が「読書時間0分」

2012年の研究では高校生の読書時間が0分っていうのは衝撃だわ!

活字がメディアの王様だった1950年代と違って現代ではスマホ、動画、TVその他エンターテイメントがたくさんありますよね。
■ 一ヶ月の読書冊数(平均)
- 小学生:13.5冊(最多は小学2年生の21冊)
- 中学生:4.1冊
- 高校生:1.5冊(最少は高校3年生の1.1冊)

何故か年齢を重ねるにつれ読書冊数が少なくなっていくという結果になりました。
考察と今後の課題
読書興味の発達段階(阪本 一郎の1950)についての読書興味の発達段階モデルについての再検討(野口 武悟2012)では考察と今後の課題が記載されています。
まとめると以下の通りです。
- 現代の子どもたちの読書興味は、旧来の発達段階モデルでは把握しきれない。
- メディア環境の変化(ゲーム、ネット、ケータイ小説等)が、読書行動に大きな影響を与えている。
- 読書指導においては、「大衆文学」や「ライトノベル」も含めた柔軟なアプローチが必要。
- 読書興味の多様化を前提とした教育現場での支援が求められる。
メディア環境の変化は読書環境の大きな変化を生んだことから、旧来の発達モデルでは把握できない。
今後もメディア環境の変化を追って新たな児童の発達モデルを発見して提唱し続けることが大事であり、図書館としても、読書冊数の少なさは図書館存続の危機にも当たることから、読書興味の多様化を認めた上で本に接する時間を教育現場からも支援することが求められています。

野口 武悟さんよく2012年に研究してくれたね。ありがたいですね!
児童サービスのこれから:研究と実践の融合
児童サービス論を学ぶ中で、既存の理論に加え、新たな研究や現場での実践の声にも耳を傾けることが大切です。
特に現代の子どもたちにとって「読書」とは何かを問い直し、柔軟かつ創造的なサービスを提供する姿勢が求められています。
司書を目指す学生としては、レポートなどでの学びを通じて、こうした知見を実践に活かすことが期待されます。
子ども一人ひとりと向き合う姿勢が大切
図書館員が児童サービスを行ううえで重要なのは、目の前の子どもが何を求めているかを見極め、適切な資料を提案する「利用者中心」の視点です。
個々人の発達を見極め、子ども一人一人に向き合っていくことが大事になります。
まとめ:児童サービス論を学ぶ意義
児童サービス論は単なる知識の詰め込みではなく、未来を担う子どもたちの育成に関わる大切な分野です。
図書館は子どもにとって初めて出会う社会資源かもしれません。
その場でどんな出会いを提供できるかが、司書の腕の見せどころです。
子どもの発達に寄り添いながら、本というメディアを通して可能性を広げていく——そんな魅力的な役割を担う児童サービスについて、ぜひ前向きに学び、実践へとつなげていきましょう。
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