ハン・ガン『涙の箱』評論社:junaida挿画が紡ぐ、悲しくも美しい大人の童話

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心に響く「涙」の物語。

2024年にノーベル文学賞を受賞した韓国の作家、ハン・ガン氏。彼女の文学世界への入り口として、日本で初めて刊行される作品が、この『涙の箱』です。

本作は、ノーベル賞受賞後、日本で初めて刊行されるハン・ガン作品であることに加え、不思議で幻想的、そして悲しくも美しい「大人のための童話」として幅広い年齢層に愛されています。

さらに特筆すべきは、日本語版の絵を、ハン・ガン氏自身が長年のファンであったという画家 junaida(ジュナイダ)氏が担当している点です。この幸せな出会いによって生まれた絵は、物語と私たち読者を深いところでつないでくれます。

しぃしぃ
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junaidaさんの絵はファンも多くて独特の世界で魅了し続けているわよね。EDNEは買っちゃったわ~。

「涙」という普遍的なテーマを通して、私たち自身の心と向き合うきっかけを与えてくれるこの物語の魅力と、著者ハン・ガン氏について詳しくご紹介します。

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涙の箱 書誌情報(日本語版)

  • タイトル:涙の箱
  • 著者:ハン・ガン
  • 翻訳:きむ ふな
  • 装画:junaida(ジュナイダ)
  • 出版社:評論社
  • 発売日:2025年8月18日
  • 価格:1,650円(税込)
  • 判型/ページ数:46判/約88ページ
  • ISBN:978-4-566-02489-2
  • 原著発売:2008年(韓国)
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魅力解説:「純粋な涙」をめぐる希望のものがたり

ノーベル賞作家ハン・ガン氏がとても短い物語に描いた「純粋な涙」とはどのような物語なのでしょうか?

1. 物語のテーマとあらすじ

「この世で最も美しく、すべての人のこころを濡らすという『純粋な涙』を探して」

昔、ある村に住んでいた、ほかの子どもとは違う特別なところを持つ一人の子どもから始まります。その子は、みんなが予測も理解もできないところで涙を流し、「涙つぼ」と呼ばれていました。雨が降る前の風や、近所のおばあさんが頬をなでるだけでも、澄んだ涙がぽろぽろとこぼれ落ちたのです。

そんな子どものもとに、ある日、真っ黒い服を着た男が訪ねてきます。男は「私は涙を集める人なんだ」と語り、大きな黒い箱を開けて、大小、かたちも色もさまざまな、宝石のような涙を見せます。そして、男は子どもに対し、この世で最も美しい「純粋な涙」を探しており、子どもがそれを持っているのではないかと問いかけるのです。

2. 深い絶望と希望、そして涙の教え

『涙の箱』は「童話」と銘打たれていますが、深い絶望や痛みを描き、そこを通過して見える光を描くハン・ガン氏の作品世界を色濃く感じられる作品です。読者は、この物語を通して、「涙とは何か」を自問するようになるでしょう。

涙を集める男は、涙つぼの子どもに対して、涙について重要な言葉を語ります。

「きみの涙には、むしろもっと多くの色彩が必要じゃないかな。特に強さがね。怒りや恥ずかしさや汚さも、避けたり恐れたりしない強さ。」

「いろんな絵の具を混ぜると黒い色になるけど、いろんな色彩の光を混ぜると、透明な色になるように」

この言葉は、純粋な涙とは「無垢な涙」ではなく、喜びや悲しみ、怒りや戸惑いなど、複雑な感情を経験し、包み込んだ涙であることを示唆しており、物語は涙をめぐる「あたたかな希望のものがたり」として展開します。

しぃしぃ
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ハン・ガンさんは一言一言の言葉の威力が強いのよね。流麗ではなく強靭な言葉遣いをする印象だわ!

3. junaida氏との幸福なコラボレーション

「涙の箱」の大きな魅力の一つが、画家junaida氏による装画と挿絵です。junaida氏の絵は、ハン・ガン氏が「読者それぞれのなかにある希望の存在」として描いた主人公や、どこともいつとも特定しない本作の世界を美しく描き出し、読者を物語へと誘ってくれます。

読者からも、junaidaさんの美しい表紙絵に惹かれた、ハン・ガンさんの純粋で美しい文章にそっと寄り添っている、「夢のように美しい本」といった感想が寄せられています。

しぃしぃ
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これは、読書用に一冊。インテリア用に一冊買う価値ありね!

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ハン・ガン紹介:ノーベル文学賞作家の軌跡

  • 本名(朝鮮語):韓江(ハン・ガン)
  • 生年・出身:1970年、韓国・光州生まれ
  • 学歴:延世大学 国文学科 卒業
  • 作家デビュー:1994年、ソウル新聞新春文芸に短編「赤い碇」が当選
  • ノーベル文学賞:2024年受賞
    • 受賞理由
      「過去のトラウマに向き合い、人間の命のもろさを浮き彫りにする強烈な詩的散文」 が評価されたため

主な受賞歴

  • 2005年:李箱文学賞(『菜食主義者』)
  • 2016年:国際ブッカー賞(アジア人初・『菜食主義者』)
  • 2023年:メディシス賞外国小説部門(『別れを告げない』)

邦訳された代表作

  • 『菜食主義者』
  • 『少年が来る』
  • 『すべての、白いものたちの』
  • 『別れを告げない』

ハン・ガンは、人間の根源的な悲しみやさびしさを緻密な筆致で描く作家さんです。
その作品は「細部の精密さ、飛躍や断絶のない構成、豊富な象徴性」で高く評価されていますね。
『涙の箱』は、ハン・ガン文学への入門としても最高の入門となる一冊です。

涙の箱

  • 著者:ハン・ガン
  • 翻訳:きむ ふな
  • 装画:junaida(ジュナイダ)

わずかに伝わる涙の色は、いつかの心が流れ出るから。「純粋な涙」を集めれば渇いた砂漠も潤うオアシスに生まれ変わる。
いつか、いつかと自分を偽っていた本当の自分が色彩を帯びて溢れていく。
「涙」を巡る物語はいずれあなたの物語になっていく。
画家junaidaによる装画と挿絵は物語の世界へ飲み込まれる勢いで読者を「涙の箱」へ誘っていきます。
「涙の箱」は、ハン・ガン文学最高の入門となる一冊。

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まとめ:大人になったあなただから贈る物語

『涙の箱』は、涙を流すこと、感情をあらわにすることの大切さを静かに問いかける物語です。

この物語を読んだ多くの読者から、「優しくて美しい、希望の物語」、「心が優しくほぐれていった」、そして「読後には爽やかな気分になれた」という声が寄せられています。

「泣いてはだめ」という言葉を聞いて育ち、いつしか泣くことを忘れてしまった大人、感情を抑え込んで辛い思いをしている人、そんなすべての人に、ハン・ガン氏とjunaida氏が贈るこの一冊をおすすめします。

「涙」の真の意味を知る旅路を通して、あなた自身の心にたまったつかえや汚れが解放されるのを感じられるでしょう。大切な人にプレゼントしたい、美しい一片の詩のような作品です。

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