多田けい子さんの『44の茶箱あそび』:小さな箱から広がる無限の物語

小さな箱から広がる 無限の物語 よむ
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手仕事の温もりと日本の伝統文化が息づく茶の世界に触れる一冊、多田けい子さんの新著『44の茶箱あそび』を拝読しました。

びぶーん
びぶーん

茶箱ってなんだ?という疑問から入りましたが、茶道のお道具一式を箱や籠に詰めて携帯できるようにしたものだそう。

しぃしぃ
しぃしぃ

お道具にも遊び心があるなんて素敵ね。

お茶を愛する方はもちろん、美しいものや手仕事に興味がある方にとって、まさに心揺さぶられる美しい一冊です。本書は、茶箱という小さな世界に込められた著者の自由な発想と深い美意識が凝縮されており、その魅力に引き込まれずにはいられません。

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多田けい子さんとは

多田けい子さんは1956年石川県生まれで、現在は金沢市に在住されています。彼女はインスタグラムアカウント@tea_keikoで6.6万人以上のフォロワーを持つ人気インスタグラマーとしても知られています。インテリアコーディネーターの資格を持ち、美術史を専攻していた彼女の審美眼は、茶箱の作品に強く反映されています。

2003年に仕覆(道具入れの袋)作りを、そして2012年には茶箱製作を開始。嫁ぎ先である金沢の旧家に伝わる骨董品との出会いが、彼女の創作活動の大きなきっかけとなりました。地元の古美術商や東京のギャラリーからも仕覆製作の依頼を受けるなど、その手仕事の妙と美的センスは高く評価されています。多田さんはこれまでに3度の茶箱個展も開催しており、その独創的な「見立ての美意識」と裂(きれ)の取り合わせが評判です。

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茶箱とは

茶箱とは、お茶を点てる道具一式を箱や籠にコンパクトに詰めて携帯できるようにした、茶道具の一種です。籠形式のものは「茶籠」と呼ばれます。その歴史は古く、千利休の時代には「茶弁当」として使われ始めたとされます。江戸時代後期には、裏千家11代家元の玄々斎が利休の茶箱を元に「茶箱点前」を考案し、茶道における重要な要素となりました。

茶箱には、茶巾筒、茶筅筒、振り出しといった特有の道具に加え、小ぶりの茶碗や棗、茶杓などが収められます。多田さんの茶箱の大きな特徴は、この中に収める道具の「見立ての楽しさ」を追求している点です。

例えば、イギリスのバスケットを茶籠に、フランスのピルケースを香合に見立てるなど、古今東西の様々な品々を茶道具として活用します。また、仕覆はすべて多田さんの自作であり、細部にまでそのこだわりと手仕事への愛が感じられます。

びぶーん
びぶーん

古今東西お道具に込める美意識に人間の余裕と遊び心を感じますね。

しぃしぃ
しぃしぃ

遊び心があってこそ人の命は輝くってもんよ!

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感想

『44の茶箱あそび』は、多田さんが10年以上の歳月をかけて組み上げた44の茶箱が収録されており、一つ一つの作品に込められた物語と美しさに魅了されます。彼女の作品は、洋風の白い薬箱に赤を取り入れた「フィオルッチの箱」や、チョコミント色の内張りの「仏蘭西の籠I」など、伝統的な茶のルールを守りつつも、非常に自由な発想と遊び心に満ちています

本書を読むと、茶箱作りの奥深さと、多田さんの言葉「高いものが素敵なのでは当たり前でしょう?」「古物ばかりじゃつまらないし、組み合わせや見立て次第でそのものが光る」に共感を覚えます。古いものと現代作家の作品、高価なものと手頃な掘り出し物を巧みに組み合わせることで、道具が何倍にも見違えるという彼女の美学が、ページをめくるごとに伝わってきます。

「フェルメールの箱」の色合いが個人的には好きだったなと思いますが、「フェルメール」と名前がついているからといって画家のフェルメールをイメージして作ったわけではなく、多田けい子さんの近所にある「フェルメール」という名前のアンティークショップで買ったからだというから、騙された!と思ったが、フェルメールと名前がついていると不思議と画家のフェルメールのイメージと近い茶箱の色合いになっているから不思議です。

コラム「茶箱茶籠の組み方ワンポイント」や「仕覆の楽しみ」は、これから茶箱を組みたい人や手仕事好きにとって実践的なアドバイスが満載で、彼女の経験が惜しみなく語られています。この本は、単なる茶道具の紹介にとどまらず、「基本を大切にしながら、自分らしく創造する」という多田さんの人生観や美意識そのものを提示していると感じました。伝統と革新、そして日々の暮らしに潤いをもたらす骨董の楽しみ方が凝縮された、心豊かな一冊です。

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日々の花、日々のこと

また、多田けい子さんが「日々の花、日々のこと」を出版されました。

内容は、多田けい子さんがお客様をお出迎えするとき、また、日々の行けたお花たちのきれいな写真と一言添えた全面カラーのとてもきれいな一冊になっています。

どんなお花を活けているかというとどこで咲いたかという出自を知る花ばかり。お庭などから持って来てきれいに活けています。多田さんの素晴らしいところは3点。写真の撮り方、お花の活け方、自分のための生け花である点です。

写真の撮り方

手前をぼやかして奥行きをきちんと揃えて焦点をお花に持ってくるという写真は簡単そうに見えて誰でも取れるものではありません。きっと多田さんには写真が平面の紙ではなく、空間に見えているのでしょう。

写真を撮るテクニックはもちろんのこと、どこか日常を切り取った風景に見える写真一枚でも和の感情が写真から溢れてくるような「奥ゆかしさ」があることです。これはテクニックを超えた多田さんのセンスがなせる技といえるでしょう。

お花の活け方

私は華道のことは分かりません。ただ写真を見て出てくる言葉はあまりにも「華美」ではないということです。

有名な華道家さんたちのイメージはホテルのロビーに、展示会の入場口に、エントランスに華々しいきれいなお花を活けてありますよね。でも多田さんの活け方というのは、私たち日常を生きるものに真似できそうだな。こんなお花が活けてあったらいいなという生活に落とし込んだ活け方でした。

人に魅せる人のためのお花の活け方ではなく、まさに自分のために行けているということです。

自分のための生け花

「日々の花、日々のこと」のはじめにでも触れられていますが、日々なぜ花を生けるのかというとお客様をお迎えしたり、自分がこれいいなと思ったりしていけるのだけれど、結局は自分のために生け花を飾ってるというくだりがありました。

出版されて一冊の本になったのだから人のために行けたお花ばかりかと思うなかれ、すべて多田けい子さん自身の身から生まれた「自分のための生け花」であると述べています。どんな人間でも人のためにと思えば、相手に求めるものも変わってきます。要求は激しくなったりする。

でも、純粋に「自分のための生け花」とおしゃるこの綺麗な一冊はすべて多田けい子という一人の人格を本に落とし込んだ純粋な人間味が出ている一冊であるという証左だと感じました。

しぃしぃ
しぃしぃ

これぞ、AIには作れない一冊!

素晴らしく、本当に優雅な一冊を世界文化社さんが出版してくださって感謝いたします。きっとこの一冊を見て気持ちが和らぐ方もたくさんいらっしゃることでしょう。

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まとめ

大人のおしゃれ「茶箱」の世界に覗く個人の色とりどりの世界観がきれいな写真と印刷によって、本として具現化された一冊。

多田けい子さんが10年以上かけて44の世界を作り上げられた風景はただの茶道の「お道具」を通り越して時空を彩り、空間を好みの世界に変えていく効力を持っている。もしかしたら、茶道とはお茶やお菓子、礼儀作法だけでなくお道具まで異空間に連れて行ってくれる教えの道なのかもしれない。そう思わざるを得ない「茶箱」独特の表現が創作されています。

最後までお読み下さりありがとうございます。

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